虎尾伴内の手帳 ~真夏の顔を持つ男~

ただしBREEZEは鼻から通り抜ける

幼い僕の声、若い祖母の声。

祖母が、僕の机の中から発見したというカセットテープを聞かせてくれた。

「これ、あんたの小さなころの声だよ、確か2歳になる前くらいだったと思うけど・・。」そういって祖母は僕と小さなころの僕の声を聞いていた。

まだ言葉を話せる段階ではなかったので、「バー」とか「ダー」とか、イクラちゃんのようにわけもわからず声を出す僕の姿を祖母は思い出しただろうか?

そんな、一見全く意味が無いようでいてものすごく意味のある録音は5分ほど続いて、その後は「夜のヒットスタジオ」を録音したものが入っていたのだが・・・。

僕は持ち前の好奇心で、テープを少し早送りさせてみた・・。まだ、夜ヒットだ。

さらに早送りさせてみた・・・五木ひろしが入っていた。

もっと早送りすると・・・聞き覚えのある声が演歌を歌っていた。

声の主は、今よりずっと若かったであろう祖母だった。

テープを裏返しても同じような歌を歌う祖母の声が入っていた・・・。

僕はちょっと思いついて、手元にあった携帯で自分の声を録音した。実は僕には暇なときなんとなく自分の声を携帯で録音して遊ぶ癖があるのだ。(すぐ消すけど・・)

とはいっても僕は演歌を知らないので、自然とQUEENの曲になったが・・。

僕は男にしては若干声の高いほうなので、もしかしたら祖母の声に似ているのでは・・・と。

聞き比べたが、あまりにていなかった・・・ちょっとがっかりしたが、2人とも好きな歌を歌って、録音してみるという行為をやってる時点で声質とは別のところで似ているなぁ・・と思った。